第3回 〜光スペクトルの重要性〜

第3回 〜光スペクトルの重要性〜

適切なスペクトル比

植物にとって適切なスペクトル比(光の色合いや波長の配分)は非常に重要です。
スペクトル比は光合成や成長に直接影響を与える要素であり、植物の健全な生育に不可欠です。

光スペクトルの重要性は、生物が光をエネルギー源あるいは外的環境のシグナルとして受け入れ、生体内で相互作用することに起因します。
つまり、光はさまざまな波長を持ち、異なる波長の光を光合成のエネルギーや外的環境の情報として生物が利用していることになります。

例えば、可視光線は私たちの目に見える400ナノメートルから700ナノメートルの範囲の光であり、太陽光では赤色から紫色までの連続的なスペクトルを持ちます。
また、可視光以外の紫外光や近赤外光も我々に影響を与えます。
このように、生物にとって、連続的な光スペクトルのうち、特定の波長の光が重要な役割を果たします。

植物は光合成によって生命を維持し生長しますが、その際に特に青色と赤色の光が必要です。
青色光はクリプトクロームとフォトトロピンという受容体で認識され、葉や茎の成長を促進し、光合成を行う葉緑体の形成に寄与します。
一方、赤色光はフィロクロムという受容体で認識され、発芽、開花や果実の成熟に影響します。

また、光スペクトルは物質の性質や反応にも影響を与えます。
例えば、青色よりも短波長側の紫外線は化学反応を引き起こすため、殺菌や消毒に利用されます。

さらに、光スペクトルは光源の選定や設計にも影響します。特定の用途に適した光源を選ぶことで、効率的なエネルギー利用や目的の達成が可能となります。

青色光と赤色光のバランス

観葉植物を育てる際、青色光と赤色光のバランスは重要な要素です。

青色光は植物の成長の初期段階で重要であり、特に茎や葉の伸長を促進し、形態を調節します。青色光の波長は赤色光とともに光合成色素であるクロロフィルに光子のエネルギーが吸収され、その吸収スペクトルのピークに近いため、光合成初期段階でのエネルギー供給を助けます。

一方、赤色光は花芽形成や開花、果実の成熟などの成熟段階において重要な役割を果たします。
赤色光はクロロフィルに吸収され、これによって光エネルギーが化学エネルギーに変換され、炭水化物が合成されます。

赤色光は光合成に関与し、葉緑素(クロロフィル)が吸収しやすい幅広い波長範囲に位置します。
青色光も光合成に関与し、植物の成長や形態の制御に重要です。

ただし、過剰な青色光や赤色光だけを与えると、植物の成長や発育に不均衡が生じる可能性があります。 
丈夫で美しい観葉植物を育てるためには、適切なLEDライトを選び、それぞれの成長段階に応じて照明時間や光のスペクトルを調整することが必要です。

適切な赤色光と青色光のバランスがあることで、植物は最小限の光エネルギーを効率よく利用して生育するのです。

赤色光の役割

植物に使われる赤色光の波長範囲は約620ナノメートルから750ナノメートルにわたります。
この範囲の光は光合成において重要な役割を果たします。

赤色光は、クロロフィルと呼ばれる色素分子に吸収されます。クロロフィルは葉緑素の主要な成分であり、光合成のエネルギー変換で中心的な役割を果たします。
赤色光の波長はクロロフィル分子によって吸収されやすく、これによって光エネルギーが化学エネルギーに変換されます。

また、赤色光は光子のエネルギーを光合成に使うだけでなく、フィトクロムという光受容体に感知され、光に適応した植物の生長に重要な影響を与えます。
例えば、赤色光の刺激が種子の休眠状態を解除し、発芽を促進します。

赤色光が与える影響

赤色光は植物に対して重要な影響を与えます。赤色光は光合成のカギとなるだけでなく、外的シグナルとしてフィトクロムを介して形態形成に影響します。
赤色光は光合成や生長に関連する要素に特に影響を与える波長範囲に属します。

光合成ではクロロフィルと呼ばれる色素が赤色光を吸収し、光エネルギーの利用を促進します。

また、赤色光は植物の成長と発育にも影響を与えます。
赤色光の存在下での光周期(昼夜の周期)の調節や、種子の発芽を促進する役割があります。
特に、種子が土壌中にある際に赤色光が届くことで、休眠状態から覚め、光の方向に目を伸ばし、植物が成長するための刺激を受けることができます。

逆に緑色の光は植物にとっては吸収が少ないため、葉緑素が緑色に見える一因となります。
植物は赤色と青色、紫外光を認識しますが、緑色は認識しません。

青色光の役割

植物にとって青色光の波長範囲は約450ナノメートルから495ナノメートルの領域です。
この波長の光は光合成において重要な役割を果たします。

青色光は、赤色光と共に光合成のカギとなる要素です。
クロロフィルと呼ばれる色素分子は、青色光を吸収しやすく、これによって光エネルギーが化学エネルギーに変換されます。

青色光はまた、クリプトクローム、フォトトロピンという2つの受容体によりシグナルとして感知され、植物の生長と形態の制御にも影響を与えます。
例えば、青色光は植物の茎や葉の伸長を促進し、形態を調節します。
また、青色光の存在下での光周期(昼夜の周期)の調節や、気孔の開閉にも関与します。

さらに、青色光は光感受性の調節にも関与します。
植物は青色光を感知して生育方向を変えることができ、これによって光源の方向に向かって生長することができるのです。

青色光が与える影響

青色光は植物に対して重要な影響を与えます。
青色光は光合成に不可欠な要素であり、葉緑素(クロロフィル)と呼ばれる色素分子によって吸収されます。
このプロセスによって光エネルギーが化学エネルギーに変換され、植物は太陽光を利用して栄養を生産します。
また、青色光により気孔が開き、二酸化炭素を効率よく取り込んで光合成の効率に影響します。

青色光はまた、植物の成長と形態の制御にも重要な役割を果たします。
例えば、青色光は茎や葉の伸長を促進し、植物の形態を調節します。
これによって、植物は環境の変化に適応して生育できます。

さらに、青色光は光感受性の調節にも関与します。
植物はクリプトクロームにより青色光を感知し、その方向に生長することができるため、光源の方向に向かって生長します。
青色光によって、植物は最適な光環境を利用して生育するのです。

光スペクトルの調整と最適化

LED照明のスペクトル調整機能は、観葉植物の成長やみずみずしさに影響を与える重要な要素です。
通常、LEDライトは植物の光合成に必要な赤色と青色の光を提供しますが、スペクトル調整機能を備えた照明は、これらの基本的な波長に加えてさまざまな波長の光を制御できる能力を持っているのです。

例えば、赤色の光は花芽の形成や開花を促進し、青色の光は光屈性と葉や茎の成長をサポートします。
さらに、他の波長の光は植物の特定の生理活性に影響を与える場合もあります。

スペクトル調整機能を使用することで、植物の成長段階や種類に適した最適な光環境を模倣することもできます。
例えば、成長段階が異なる場合、花芽形成期には赤色の光を強調し、葉の成長が主要な時期には青色の光を増やすといったことができるのです。

また、観葉植物は種類によって異なる光の要件を持っているため、スペクトル調整機能を使用してそれぞれの植物に最適な照明環境を提供することができます。

LEDライトのスペクトル調整機能は、観葉植物の成長や健康を最適化するために、必要な波長の光を調整する重要な機能です。
それにより、植物が最適な状態で育つことができるのです。

成長段階に応じた適切なスペクトル設定

植物の成長段階に応じた適切なスペクトル設定は、光合成や植物の生育に重要な影響を与えます。
一般的に、植物は異なる成長段階で特定の波長の光を必要とします。

発芽期や苗期では、植物は青色の光を多く必要とし、これは葉の形成や根の生長を促進します。
そのため、この段階では青色の光を強調したスペクトルが適切です。

成長期に入ると、赤色光が重要になります。
赤色光は青色光とともに葉緑体内のクロロフィルに吸収され、光合成の光エネルギー変換に使われます。
これにより、葉が健全に成長し、炭水化物(デンプン)や他の有機物が合成されます。

花芽形成期には、赤色の光をさらに強調し、花や果実の形成を促進します。
赤色の光は、植物ホルモンのバランスを調整し、花芽の発生を助けます。

また、収穫期には特定の成分や有機物の蓄積を促すため、特定の波長範囲の光を利用することがあります。

つまり、成長段階に応じた適切なスペクトル設定は、植物の光合成や生育を最適化し、健全な成長を促進します。
適切なスペクトルを異なる時空間で提供することで、植物は最適な状態で育ち、より豊かな収穫を得ることができるのです。

段階ごとの光合成や生育を最適化する光スペクトル

LEDライトの光スペクトルは植物成長に深い影響を与える重要な要素です。
適切なスペクトル設定によって、成長段階ごとの光合成や生育が最適化され、健全な成長が促進されます。

例えば、青色の光は発芽や苗期に重要であり、赤色の光は生長期や花芽形成に必要です。
これらの光の波長は光合成の最適化やホルモンの調節に影響を与え、植物の生理活性を調整します。

したがって、LEDライトのスペクトル調整機能を活用することで、最適な光環境を提供し、植物は最適な状態で育ち、豊かな収穫物を得ることができます。
このように、LEDの光スペクトルと植物成長は密接に関連し、適切な光環境を提供することで生育を最適化することが重要なのです。






執筆:BARREL編集部
監修:坂本亘
岡山大学資源植物科学研究所光環境適応研究グループ教授。1990年東京大学大学院農学研究科修了、農学博士。シアノバクテリアの細胞内共生に由来する葉緑体の形成を40年近く追い続け、モデル植物で光合成を研究する葉緑体生物学者。専門は植物生理学